【コラム】ガイドナビのスタートにあたって(ガイドの、ガイド)

エピソード

通訳ガイドという仕事

興味津々に来日する外国人観光客を日本各地の観光地に案内し、美しい景色や歴史的な建造物や施設を楽しんでもらうだけでなく、今の日本の文化や社会を知ってもらい、意見を交換して理解を深めてもらう。そんな観光旅行を安全に安心にご案内して喜んで頂き、「あなたのお陰で日本の滞在が楽しめました。ありがとう!」と、感謝される…。こんな楽しくてやりがいのある活動は、さらに「民間大使」と呼ばれ、世界中に親日派を増やして国際交流に貢献し、平和に繋がる一歩となる…通訳ガイドのお仕事とは、なんて夢のある、そして意義深いものでしょう。学生時代から私も憧れを持っていた職業です。

コロナ禍の鎖国状態で2年半以上活躍の場を失った通訳ガイドの中には、諦めて別の世界に去られた方々もいます。でも、やっとインバウンド再開に進む中、「いよいよ!」の思いで嬉しい緊張感を募らせ、身震いをしている通訳ガイドさん達も多いはずです。まだ業界がスローなうちに、繁忙期が来たらその時間がとりづらい下見、情報収集、そして語学力やガイドスキルアップを目指す準備作業を進めてゆきましょう。

通訳ガイドの責任

現在、日本には、(1)全国通訳案内士(2)地域通訳案内士、の2種類の資格保持者、(3)国家資格は持たずに稼働、そして(4)ボランティア、という4つのカテゴリーでガイドが存在しています。

難関の国家試験を突破した全国通訳案内士は、国によってその品質が担保されたレベルという意味ですから、他とは一線を画したトップとして業界を牽引する責任と期待を背負っています。地域通訳案内士は、文字通り特定の地域においては、最も地元に根差した情報に通じて案内ができるという特性が売りです。資格にこだわらず稼働する通訳ガイドは業界の裾野を広げ、より広い分野や視点でインバウンド対応力を強化する存在となっています。また、ボランティアのガイドは世界中どこにでもなくてはならない存在。国際イベントで「ボランティアが素晴らしい」と話題になったように、そのクオリティが、その地域の人々の意識の高さを反映する一面もありますね。

国家試験の合格率が2%台だった時代から比較すると、通訳ガイド数は劇的に増えて多くの外国人観光客を受け入れることができるようになりました。しかし、サービス品質がピンからキリまで幅広くなったという落とし穴も否めません。「今回のガイドは当たりだ」「外れだ」というのではなく、依頼者が適切に判断できるように品質の明確な見える化が課題だと感じます。

どんな立場でもそれなりに、通訳ガイドのサービス品質は高くあって欲しいのです。世界のどの国と比較しても負けないぐらい。そう、私たちが競い合うのは世界中の観光ガイドさん達。数ある観光訪問地の中から日本を選んで欲しい、そして来日したからには期待に応え、いや期待を超える感動を持ち帰って頂きたいですね。

そこで通訳ガイドの責任も感じるわけです。ガイドの知的レベルや人格が「日本人って、こんな感じなんだ~」と日本全体の印象として外国人観光客の心に残ります。帰国後そのイメージは周囲に拡散してゆくので、お客様にとって通訳ガイドとは強力な“インフルエンサー”です。

情報は十分な量を適切に提供しているか?お客様は楽しんでくれているのか?希望を正しく理解しているか?自分の語学力は十分で、お客様にストレスを与えていないか?言語に語られない客心理を洞察して、満足してもらえているのか?

すべてに真剣に向き合おうとすると、気が重くなってしまうかもしれません。逆にベテランには、こんな基礎項目が慣れから来る落とし穴だったりもします。

ガイドを救う手段と機能

しかし、窮地でもガイド自身を助ける方法は多々あるので、ド~ンと落ち込む必要はありません。

たとえば語学力不足で語彙力も弱い、微妙な言い回しはどう言って良いのかわからない…で引っかかると、ひと昔前だったら即アウト~!仕事の依頼も激減し自信喪失となりました。でも、今は、携帯電話で不明な単語はすぐ調べられる、翻訳機能でどんな言語でも戸惑う表現もすぐに解決。突然「ハラールのラーメン食べたいけど?」と尋ねられても情報ゲットできる…IT機器のお陰で可能性が果てしなく広がってきました。

そしてガイドナビも可能性を広げる手段の一つ!便利な機器や情報サイトを使いこなすのもガイドに求められる要件です。利用くださるインバウンドガイドの皆様のご活躍と成長と共に、心強いお役だちサイトとして、ガイドナビの発展も祈り見守りたいと思います。

 

ランデル 洋子(全国通訳案内士/GICSS研究会 理事長)

名古屋出身。フリーランスの英会話講師、海外旅行添乗員・海外駐在員、通訳ガイド、ビジネス通訳、アラスカツアーオペレーター事業運営などを経たのち、株式会社ランデルズにてグローバル人材育成や通訳ガイドの派遣・研修業務に携わる。元アメリカ大統領親族のアテンドなど重要業務を歴任しつつ、オランダIOU大学で異文化情報学博士号を取得し、GICSSを創設。愛知万博では日本(政府)館VIPエスコートのトレーニング講師を務めるなど全国での講演、研修、執筆活動に従事。また観光庁の通訳ガイド関連の委員会委員を歴任。日本の通訳ガイド育成の第一人者と定評がある。

著書:「電話の英会話」「英語を使ってボランティアしたい」「外国人客を迎える英会話」「通訳ガイドがゆく」など11冊。

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