【伝統工芸】織物の歴史や著名な織物の製法を学ぼう

ナレッジ

1. はじめにー意外と知らない織物のことー

和服の女性・織物見出し織物とは何か、日本にはどのような織物があるのか。和服を着る機会が少なくなったこともあり、織物がどのようなものか、馴染みのない方もいると思います。この記事ではそのような方に向けて、日本の織物の魅力を伝える上でのポイントを紹介しています。

日本にはその地域ごとに織物があります。彩りが鮮やかなもの、機能性の高いものなど、さまざまです。ガイドとしても、街中で和服を着ている人を見かけた時や、旅行者がお土産として着物を購入する際など、伝統工芸である織物について紹介する機会があるでしょう。

2. 織物の歴史と種類

日本の織物の歴史

機織り機織物とは、縦糸と横糸を交差させて作られる布地のことです。農作物と比べ、持ち運びが容易で天候に影響されずに生産できる織物は、人類の歴史の中で交易品や税金の代わりとして重用されてきました。

日本に織物の技法が伝わった時期ははっきりとしていませんが、縄文時代には簡単な織物の技術が伝わっていたと考えられています。この頃、織物の素材は麻や藤、葛(くず)などの植物の繊維が主で、絹織物はまだまだ珍しいものでした。

奈良時代に入ると高度な織物の技術が中国より伝えられ、品質の高い絹織物も作られるようになりました。これらは一部の上流階級の人しか着ることが出来ず、庶民は「調」として絹織物を税金の代わりに納め、麻の織物を主に着用していました。

平安時代に入ってから、織物はさらに進化していきました。貴族の文化の中で織物は日本の風土に合わせて発展していきます。着物を重ねて着る方法が定着していき、色の組み合わせや調和を大切にする感性が発達しました。現在でも皇室が儀式などで着用する十二単(じゅうにひとえ)や束帯などが代表的な例です。

江戸時代には各藩の奨励のもと、絹織物が地場産業として発達しました。この時期に成長し、現代に伝えられている西陣織(京都)や博多織(福岡)などの絹織物の伝統工芸品も多くあります。

全国各地で絹織物が作られたことで、貴族や武士、そして豪商も絹織物を身に着けることとなりましたが、絹の価値を下げることを防ぐため、庶民は絹の着用が禁止され、麻や綿の織物を着ることが多かったようです。誰しもが好きな素材の織物を着用できるようになったのは比較的最近のことと言えます。

織物の製法について

機織り機・アップ日本に伝わった織物は、各地の気候や風土に合わせて、さまざまな織り方や製法によって作られるようになりました。ここからは日本の織物に使われる製法について説明します。

紬(つむぎ)

紬は、絹もしくは木綿を平織り(糸を縦と横に交互に浮き沈みさせる織り方)の織物です。生糸にできない玉繭や繭糸を真綿にし、日常着用に手織りしたものを発祥としています。江戸時代に人気を博し、次第に高級品として扱われるようになりました。耐久性が強いのが特徴です。

絣(かすり)

絣は、絣糸(2色以上の色に染め分けられた糸)を用いて織物をつくる技法、もしくはその技法でつくられた織物を指します。織物に文様を施す技法にはいくつかありますが、絣は表現する文様に応じて、織る前に糸に部分的な防染処理を施すことで、独特のかすれ具合を出すことを特徴としています。

上布(じょうふ)

上布は、薄手の良質な麻織物のことを指します。江戸時代には武士の正装が麻織物であったため、「上納される布」であったことを名前の由来としています。吸汗性と肌ざわりが良く、シャリシャリとした風合いが見た目に涼しいことから、夏用着物の素材として多く使われます。

縮(ちぢみ)

縮は、織面にしわのようなしぼ立ちのある生地のことを指します。織物を織る際に糸をねじること(撚り)で、撚り(より)がほどけたときにできる自然なシワ状の風合いを出すことを特徴としています。素材も麻や綿などの涼やかな素材で織られ、夏用着物の素材として多く使われます。

綸子(りんず)・緞子(どんす)

綸子・緞子は、縦糸、横糸共に撚っていない糸を用いて織られる絹織物を指します。織った後に生地を染めたものを綸子、染めた糸で織ったものを緞子と言います。光沢が出ることを特徴としています。

錦(にしき)

錦は、2色以上の糸で織る絹織物の総称です。縦糸で文様を織りだす経錦(たてにしき)と、横糸で織りだす緯錦(ぬきにしき)がありますが、技法の難しさから、華やかな文様は緯錦で織られることがほとんどです。古来より豪華なものとされ、魏志倭人伝には卑弥呼が「倭錦(やまとにしき)」を献上した記録が残っています。

3.代表的な織物

豪華な着物日本に数多くある織物ですが、なかでも38品目が伝統工芸品として認められ、積極的に保存が進められています。ここでは伝統工芸品に指定されているものから、代表的な品目について紹介します。

結城紬(ゆうきつむぎ・茨城/栃木)

結城紬は、茨城県と栃木県にまたがる鬼怒川流域で作られている絹織物です。奈良時代から続く高級織物で、名前の由来は鎌倉時代にこの地域の領主であった結城氏にあります。真綿から一本ずつ、手で紡ぎだすことで作られ、軽さ、柔らかさ、そして保温性に優れていることに特徴があります。ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。

近江上布(おうみじょうふ・滋賀)

近江上布近江上布は、滋賀県湖東地域、愛知郡周辺で主に作られている織物です。湿度が高い盆地である愛知郡周辺は古来から麻の生産が盛んであり、鎌倉時代には麻織物の名産地として知られていました。江戸時代には彦根藩の保護により発展し、様々な技法が生み出されました。細い麻の繊維で織られる爽やかな風合いと上品な絣模様が特徴です。

西陣織(にしじんおり・京都)

西陣織・枕西陣織は、京都市街の北西部で作られている絹織物です。起源は5~6世紀、渡来人が京都に養蚕と絹織物の技術を伝えた時と言われています。織物生産の基盤ができたのは応仁の乱の後で、西軍の本陣の跡地である西陣で職人たちが織物を作りました。
二重構造の風通しや、紗(しゃ)や羅(ら)と呼ばれる透かし生地など、多彩な織り方を特徴としており、さらに生地は先染めをしてから織っているため、丈夫でシワになりにくい点も魅力です。

博多織(はかたおり・福岡)

博多織・多種類博多織は、福岡県福岡市の博多地域で作られている織物です。鎌倉時代に中国に渡った商人が現地の織物の技法を持ち帰り、独自の意匠を加えて発展させたものが起源とされています。江戸時代には幕府への献上品に用いられ、独特の模様は「献上柄」と呼ばれています。多くの縦糸に太い横糸を打ち込んで作られるため、しなやかで丈夫であることが特徴です。

置賜紬(おいたまつむぎ・山形)

置賜紬は、山形県の南部、置賜地方にある米沢、白鷹、長井の地区で作られている織物です。置賜地方では元々、麻織物の材料となる青苧(あおそ)や染料となる紅花が採れましたが、江戸時代初期に米沢藩主の上杉景勝により養蚕が奨励されたことから、絹織物の産地へと変わっていきました。先に糸を染めてから織られる先染め技法を取り入れ、平織りで手間をかけ織り上げていることが特徴です。

弓浜絣(ゆみはまがすり・鳥取)

弓浜絣は、鳥取県境港市周辺で作られている織物です。江戸時代中期に地元に住む農家の主婦達によって生み出されたとされており、農民の自給用衣服として、動きやすく洗いやすい織物となっています。ざっくりとした風合いと素朴な柄が特徴です。

4. おわりにー織物について案内する上でのポイントー

着物を見る人たちここまで日本の織物について説明してきましたが、日本には紹介しきれないほど様々な織物の製法や、数多くの伝統的な織物が存在します。それら全てについて前もって学ぶのは難しいことですが、各地の織物を学ぶ中で、地域ごとの特徴を比較しながら伝えられるようになります。

実際に旅行者を案内する際、織物の生産地では着物を着る体験や、製作体験ができる場所もあります。また、旅行者がお土産として織物を買う場合、生産地や呉服店での購入も可能ですが、リサイクルショップなどでは、比較的安価に販売されています。

ガイドナビでは旅行者が着物を体験する際に注意点についてまとめた記事を掲載しています。

関連記事

特集記事

TOP