こんにちは。新潟県長岡市在住の全国通訳案内士(英語)町田久美子と申します。今年は3月初めから、コロナ禍後のインバウンド復活の狂乱の中で、「大変~」と叫びながら、嬉しさと“水を得た魚の様な気持ち”で過ごしておりました。本当に、良かったですね!
さて、私は旅行業を営んでおり、その仕事の一環として通訳ガイド業があります。お客様と出会って、ツアーのパーツを相談しながら作り上げ、そして実際の現場を見届けるという旅行業のオーベルジュ・オーナーみたいな感じでしょうか?
現場を見届けるガイド業も楽しいのですが、お客様と出会ってパーツを組み立ててゆくワクワク感、私にとってそれが一番の旅行業の楽しさかもしれません。
今日は、遠い昔の記憶など辿りながら、旅行業に携わり始めた当時の初々しい頃の私の思い出話などを通して、旅行業の楽しさをお伝えできればと思います。
社会人になってからほとんどの時間、旅行業界に身をおいてきました。
学生時代に希望していた業界に進めず、たまたま行き当たりばったりで旅行会社に就職してしまったので、全般的に膨大な数を限られた時間内で処理しなければならない環境にある旅行業は、ミスも発生しそうになるストレスの連続で、どうして旅行業についてしまったのかと、最初は思い悩む日々でした。そんな私が、今では旅行業・観光業界が好きで好きでたまらないのですから、人生とは本当に不思議なものです。なんでなんだろう?と考えてみたことがあります。
ふと、ある危機的場面があった時のことを思い出しました。それは、ある国でクーデターが起こり、私は添乗員としてお客様に同行していた時のこと。戒厳令がしかれれば、旅行どころか帰国が出来なくなる、危うくは人命の危険さえ出てくる。一刻も早くこの国から出国しなければいけない状況です。その当時は、携帯電話はおろか、やっとFAXが出始め、テレックスが通信の主な手段でした。じっと助けを待っている中、ギリギリのタイミングで臨時航空便が用意され、隣国に出国出来ました。他の国の旅行者や、個人の旅行者に先駆けてのことでした。後で聞くと、社内外の関連機関がチームとなって救出作戦を行ったとの事。それぞれの豊富な知識や、的確な分析能力、判断力の速さ、責任感の強さ、などなどが総合されてのことだったのです。その時私は、旅行会社が作る“旅”とは、その旅行者にかかわりあう機関全体のチームワークの結晶なのだと思い知りました。
チームワークが大事なのは、どんな仕事でも同じだと思いますが、旅行というのは「形の無い商品」で、いろんな事情により影響を受けやすいデリケートな商品です。ですから、常に全方向からの緊張感をもって運営しなければなりません。通常は、ほとんど裏方の出る幕はないのですが、実は裏方の素晴らしい采配で、緊急事態を免れていることが多いのです。それには、裏方の豊富な知識や、的確な分析能力、判断力の速さ、責任感の強さがあっての采配なのです。旅行業に長年いるベテランの手配の人にはそういう素晴らしい裏方の方が多いです。また、そういう方たちに共通しているのは、「人格者」という言葉がぴったりな人柄。まず、大抵の事には動じません。いつも穏やかで優しく、どっしりと構えています。怒鳴り散らしたり泣きわめいたりすることなく、どんな状況でもクールで落ち着いていて、相手を責めるといったような行動はしません。もちろん、ご本人の心中の本当のところまでは分かりません。内心、ハラハラしたりイラついたりされているのかも知れませんが、少なくとも周囲の人間の目にはそうは見えません。そんな彼らに、私も憧れるようになり、いつの間にか旅行業が好きになっていました。そして、今は旅行業を起業し、同業者や宿泊機関や交通機関、また、通訳ガイドの皆様とGoodチームワークを組んで、自身の目指すツアーの形を追い求めています。
好きなことを仕事にする、 “心を込めた旅行を丁寧に作る会社を運営すること”が夢であり、“お客様の良い思い出を作ること”が使命であり、それは自分の人生の意味にもなると思っています。時には、良いことばかりではなく嫌なことや挫折しそうになることもあります。そんな時にもう一歩を踏み出す力をくれるのが初心です。夢や使命を持っているからこそ、辛いときでも踏ん張ることができます。好きな気持ちは強い味方ですね。良いものを見つけたらそれを誰かに伝えるのが好き、人に喜んでもらうのが好き、自分のスキルを通して役に立つことが好き、写真や文章などで表現をするのが好き、教えるのが好き、きっと、そんなひとが旅行業(ガイド業も含めて)にあっているんだろうなと思います。私もお客様以上にツアーを楽しんでます。本当に、旅行業はやめられません(笑)
次は、初めての四国からのリポート、細川治子さん 全国通訳案内士(香川・英語)四国お遍路さんや直島ツアーのエキスパートです。新聞記者をされていた経歴をお持ちで、その鋭い感性にいつも大いにインスパイアされています。お楽しみに!