【コラム】英語 全国通訳案内士/古屋絢子(いろいろガイドの輪)

エピソード

はじめまして。神奈川県在住の英語通訳ガイド 古屋絢⼦です。
私は日本の「インバウンド観光のプレイングマネージャー」を目指し、3つの柱で活動しております。

① 英語通訳ガイド
6年間の受験勉強の末、2013年春に全国通訳案内士試験に合格しました。以来、出身地である東京を中心に、700組4,000人以上のお客様を案内してきました。

② 観光人材育成
通訳ガイド2年目から、専門学校の観光科で非常勤講師をつとめたことをきっかけに、全国各地のガイド養成講座などに出講しています。2021年からは、⽂教⼤学国際学部にて「観光英語」を担当しています。単発の講演・研修を除き、これまでに延べ700人以上を指導しました。

③観光コンサルタント
2022年、合同会社観光ラボを起業しました。
https://tourismlabjp.com/
「観光で稼げる企業と地域を日本に増やしたい」という思いのもと、観光企業の事業計画から実行を支援するコンサルティングサービスと、観光ガイド人材採用・育成サービスの2つの軸で、地域で成長する観光企業を増やすことが目標です。

なぜひとりの通訳ガイドが3つの活動を並行して取り組んでいるのか、疑問に思われる方も多いでしょう。一見、まとまりのなさそうな3つの活動ですが、すべては自分自身の通訳ガイドとしての経験が土台となっています。通訳ガイドの業務を通じて得た知⾒は貴重なものであること、もっと活⽤でき、地域に貢献できるはずだという信念があります。

2020年の春、コロナ禍で通訳ガイド業務が全てキャンセルとなり、絶望的な状況に陥りました。とにかく時間だけは豊富にありましたので、2019年までの取り組みを冷静な視点で振り返ることができました。その過程で、それまでの通訳ガイドとしての業務内容や業界の常識に対して、次々と疑問が湧きました。

例えば、有名観光地には許容量を超えた観光客が殺到するオーバーツーリズムが問題視され、ツアーの度に観光施設や飲食・宿泊業者へ不満を感じつつも、相手も自分も多忙なあまり建設的なフィードバックができず、一向に改善されていないという状況があらゆる場面で見られました。

これも2019年までの話ですが、私が環境省の事業や、各地のガイド養成に参画した際、⾏政やDMO(観光地域づくり機構)と協働しました。そこで悔しい思いをすることが多くありました。

ひとつは、通訳ガイドは地域内での影が薄く、一般には知名度の低い仕事であるという事実です。地域の魅力を外国人観光客に伝え、地域経済に貢献しているという、私のささやかな自負は打ち砕かれました。

もうひとつは、自分自身に観光業と経営(マネジメント)の知識が不⾜していることを痛感しました。せっかく良い提案をしても、それがどのように地域に利益をもたらすのかを説明できませんでした。

このような状況を変えたいと思っていたときに、転機が訪れました。
2021年の秋、5か月にわたり、⽶国のセントラル・フロリダ大学⼤学院University of Central Floridaにおいて、観光地経営Hospitality Managementの授業を日本からオンラインで受講する機会を得ました。同大学は観光経営学の分野では全⽶1位の学校で、在学中は観光の経済効果測定、地域の観光振興におけるDMOの役割、富裕層観光の実例などを学びました。

いわゆる通訳ガイドの実務やスキルとはかけ離れた分野でしたが、留学プログラムのおかげで、観光業界の構造や、観光による地域づくり、経営の好事例や失敗例を知ることができました。ご指導いただいた先生方、受講者も観光業界で何らかの実務経験者が多く、現場での経験に基づく洞察は大変に説得力があり、また共感できる内容が含まれていました。

こう書くと、留学に対してさぞかしスマートな印象をお持ちかと思いますが、実際は大違いでした。これまでに長期の海外留学・居住経験のない私にとって、日本語でも未知の分野の論文を英語で読みながら、レポートをまとめるという難題は、苦労の連続でした。おかげで、従来苦手であった英語のリーディングとライティングの力が飛躍的に伸びました。

そして留学プログラム終了後、当時の学友と合同会社を起業しました。
経営のプロである中小企業診断士と、インバウンド観光の最先端にいる通訳ガイドが協力することにより、インバウンド観光で稼ぎ、地域を豊かにしたいと思う事業者や地域を多面的に支援することができると考えました。

2023年春、通訳ガイドが現場でフル稼働する日々が戻ってきました。
通訳ガイドはツアーを通じて、海外からのお客様に地域の魅⼒を紹介するだけでなく、お客様の近くで、リアルな反応を見聞きしているから得られる知見や気づきを活⽤し、地域に貢献できるとますます確信しています。

今後は、地域の観光関連情報をSNSやウェブサイト等において外国語で発信すること、地域の観光資源の発掘、市場調査、ツアー・メニュー開発などに挑戦したいと考えています。

この記事を読んでくださっている皆様にも、ご自分の経験やバックグラウンドを生かし、地域でこうした取り組みにぜひ参画していただきたいと思います。

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