このコーナーでは、皆さんの今後の活動の参考にしていただくよう、全国のインバウンドガイドの様々な体験、失敗談のエピソードを紹介致します。今回は関東圏のバスツアーで多数の仕事をこなしている神奈川県在住の全国通訳案内士、佐々木圭子さんにお話を伺いました。
トラブル発生! 人数があいません。
「今では経験を積んで丁寧な準備でツアーに臨めるようになりましたが、この仕事を始めたばかりの頃は勝手がわからず、いろいろな失敗をしていました」と、佐々木さんは新人の頃のエピソードを披露して下さいました。
「忘れもしない初仕事は、40名ほどのお客様の富士箱根バスツアーでした」と
デビューのお話から始まりました。佐々木さんとお客様は浜松町を出発して1時間半ほどで、トイレ休憩を兼ねて富士ビジターセンター(現富士山世界遺産センター)に到着しました。
20分後、出発前にお客様の人数を数えると、2人足りません。『まだビジターセンターの中かしら?お手洗いかしら?』と「お客様~、いらっしゃいますか~?」と、トイレやお店で声に出して呼び掛けても反応無し、冷や汗だけが出てきます。バスを出たり入ったりしていると最前列に座っていたお客様が「出発の時に『今日はキャンセルがあって2人減りました』と、Keikoさん言っていたわよ」とおっしゃり、我に返りました。
そうだったのです。出発時に2名の減員を行程管理用の座席表に記載するのをうっかり忘れてしまい、実際よりも多いままの座席表を見ながら『2名戻って来ていない、どうしよう、どうしよう』と走り回っていたのでした。
別の日ツアーの帰路で、高速道路で新宿へ向かうバスは大渋滞にはまってしまいました。なかなか進まない中、見覚えのある背の高いビルが見えてきたので佐々木さんは「皆さんもう新宿です、あとちょっとですよ」と、お客様に告げました。しかし、佐々木さんが新宿のNTTドコモタワーと勘違いしたのは、世田谷ビジネススクエアという、その界隈でひときわ高く立つ様子は似ていますが、全く別のビルだったのです。すぐに新宿の15キロほど手前の用賀だと気が付き訂正しましたが「お疲れのお客様をぬか喜びさせてしまいました」と、この時も冷や汗じんわりだったと思い返します。
「目的地が変われば、当然カバンに持参する資料を選び、入れ直さなければいけません。しかし、準備万端!のはずがカバンに入っていた資料は別のルート!?ということもありました。富士箱根ツアーのバス車中で“いざ”とカバンから出したファイルは鎌倉ツアー用だったという時は、なんとか笑顔で乗り切りましたが、しっかり準備してまとめてあった話題を披露できなかったのが悔やまれました」。
その時ガイドがとった対処法は?
「勘違いを教えて下さったお客様には感謝を、間違いを告げてしまったお客様にはお詫びをすぐに伝え、落ち着いて行程を進めることに努める。そして笑顔は絶やさない。これに尽きます」が佐々木さんの信条です。
転ばぬ先の防止策は?
「仕事を始めたばかりの頃は、とにかくいろいろと余裕がない行動をしていました」と佐々木さんは振り返ります。今では気持ちに余裕が出来て、仕事の準備は新人の頃以上に丁寧に行い、そのような失敗をすることはなくなったと自負されていて「今ならば新人の頃の自分に、準備は万全にして落ち着いて行動しましょうね、と話しかけたい気持ちです」と恥ずかしそうに語る佐々木さんでした。
(執筆:舟橋 宏/GICSS研究会)
佐々木圭子(全国通訳案内士)
![]() | 2014年より全国通訳案内士(英語)として活動。富士・箱根等の定期観光バスツアー、FITの都内観光等、様々なツアーに従事する。2023年からはロングツアーにも挑戦。趣味は能楽鑑賞とBUCK-TICKのコンサート通い。2023年にはイタリア語通訳案内士の資格も取得。今後は二つの言語で日本の魅力をお客様にお伝えすることを目指している。 |
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