目次
はじめにー桜島の位置ー
桜島は鹿児島湾に浮かぶ火山島で、日本で最も活発な活火山の一つとして全国的に知られています。市内各所から望む山の景観、火山島ならではの農産物、火山灰を使ったアート体験など、人々をひきつける魅力があり、年間約200万人が訪れます。
この記事では桜島の魅力を伝える上で知っておきたい以下の3つテーマについて解説します。
- <テーマ1> 火山島・桜島の歴史と人々の暮らし
- <テーマ2> 火山灰の土壌で育つ豊かな農作物
- <テーマ3> 火山の恵みを活用した観光体験
桜島の位置

地図データ ©2023 Google
各テーマに入る前に桜島の位置について知っておきましょう。桜島は鹿児島市東部の鹿児島湾にある火山で、自治体としては鹿児島市に属しています。東西約12km、南北約10 km、周囲約55 kmの広さで、かつては名前の通り島でしたが、1914年に発生した噴火により、東側が大隅(おおすみ)半島と陸続きになり、道路が整備されました。
一方、鹿児島市の中心部からはフェリーを使って訪問可能です。鹿児島港から桜島港までの所要時間はおよそ15分で、運賃は200円です。24時間運行しています。その利便性が高さから生活の足としても使われ、通勤・通学に利用する人も数多くいます。フェリーには車も積み込むことも可能です。
<テーマ1>火山島・桜島の歴史と人々の暮らし
ここでは桜島における火山の誕生から現在までの噴火の歴史と、島の暮らしについて紹介します。特に遠い昔から噴火を繰り返してきたこと、それによって地形が変化してきたことは旅行者に伝えておきたい点です。
活火山・桜島の歴史
桜島の火山は今から約26,000年前に誕生しました。日本の火山の中では比較的新しい火山とも言われています。桜島の山は総称して御岳と呼ばれ、北岳(最高峰・標高1117m)、中岳(標高1060m)、南岳(標高1040m)で構成されています。
桜島は誕生してから17回の大噴火がありましたが、噴火活動は大きく2つの時期に分かれています。最初に噴火を繰り返してきたのが北岳です。特に約12,800年前の噴火は規模が大きく、鹿児島市街地で約1m、鹿児島県のほぼ全域で約10cmの軽石が降り積もったと言われています。北岳は約5000年前に活動を休止しました。
約4500年前から南岳の噴火がはじまり、現在まで活発な活動を続けています。文字による記録が始まった歴史時代(古墳時代以降)に入ってからは、764年、1471年、1779年、1914年と4回の大噴火があり、その度に島は形を変えてきました。1914年の大正噴火では大量の溶岩が流れた結果、桜島と大隅半島は陸続きとなりました。
現在の桜島での暮らし
現在でも火山活動は続いていて、南岳の山頂火口や南岳東側斜面の8合目付近にある昭和火口で毎日のように小規模な噴火が起きています。2022年には火口から1000メートル以上の噴煙が上がる噴火が235回、震動や噴石を伴う爆発的噴火が85回記録されています。2012年には噴火が1107回、爆発的噴火が885回だったことに比べると噴火の頻度が近年は減っていますが、桜島で噴火が起きていることは地元の人たちにとっては身近であることがうかがえます。
鹿児島市の人口は約60万人であり、これほどの規模の都市が噴火活動を続ける火山の間近にあることは世界的にも珍しいと言われています。地元の人たちにとって小規模の噴火は日常的なもので、よほど大きな噴火でない限り動じることはありません。旅行者に対しては、ツアーの開始時などに上記の噴火の頻度とあわせて、噴火による危険性はほとんどの場合は問題ない旨を伝えて、安心してもらうことも重要です。
実際に桜島を訪問する際は、島で約4500人が暮らしていること、地元の小中学生は噴火に備えてヘルメットを被って登校していること、毎年島内では大噴火を想定した避難訓練が行われていることなど、火山と共生する生活の実態を紹介しましょう。特に「桜島ビジターセンター」や「有村溶岩展望所レストハウス」では桜島の火山に関する展示資料が充実しているので、より詳しく上記の内容について伝えることができます。
<テーマ2> 火山灰の土壌で育つ豊かな農作物
桜島の人たちは噴火の被害を受けながらも、温暖な気候と火山灰の土壌がもたらす恵みを活かしてきました。御岳のふもとに広がる火山麓扇状地は水はけが良く、野菜や果物の栽培に適しています。ここでは代表的な農産物である「桜島大根」と「桜島小みかん」を紹介します。
世界一大きい大根・桜島大根
桜島大根は世界一大きい大根としてギネスブックで認定されているほど有名です。その起源は明確ではないですが、薩摩大根という名前で約300年前の書物に初めて登場しました。この薩摩大根が現在の桜島大根の同じかはわかりませんが起源の一つとされています。そして、約200年前なると、桜島大根の名前で写生図が載っていることから、この時期には既に栽培されていたことがわかっています。
桜島大根は、一般的な大根の栽培期間の2倍となる半年をかけて育成されます。収獲の時期は冬が中心で、1月中旬〜2月上旬にかけて最盛期を迎えます。20kg前後の重さにまで生育し、時には30kgを超えるものもあります。
大きさだけではなく味にも特徴があります。火山灰の土壌のため、身が締まっていながらも、食感は軟らかく、甘みは強い傾向にあります。また、煮くずれしにくく味もしみこみやすいので、煮物に非常に適しています。
収穫時期と重なっていれば市内の物産館でも流通することもありますが、数が限られています。「道の駅 桜島火の島めぐみ館」では、数多く並ぶことに加えて、1本丸ごとで販売しているため、その大きさを体感できます。また、「世界一桜島大根コンテスト」をはじめとした桜島大根にまつわるイベントも開催されています。
世界一小さいみかん・桜島小みかん
世界一大きい桜島大根と対照的に、桜島小みかんは世界一小さいみかんと呼ばれています。文献によれば、江戸時代には栽培されていた記録があり、薩摩藩から江戸幕府へと度々献上されていました。
桜島では水はけの良い土壌、日当たりがよい傾斜など、みかんを育てるのに適した条件が整っています。栽培する環境としては、ハウスの上部だけがビニールに覆われている屋根掛けハウスが使われています。これは火山灰の被害を防ぐとともに、適切な水分管理を行うことを目的としています。桜島小みかんの収穫時期は11月下旬から12月下旬にかけてで、出荷量に限りがあるため、希少価値が高いと言われています。
サイズにもよりますが、一般的なみかんの直径は6センチ程度、重さは80〜100g程度に対して、桜島小みかんはわずか4〜5センチで、重さも40g〜50g足らずしかありません。果実は小さいですが、果肉は柔らかく多汁なことに加え、甘さと酸味のバランスがとれているのが特徴です。また、「世界一実のなるみかん」とも呼ばれ、一本の木に2万個ほど実をつけます。ちなみに一般的なみかんの場合は、600〜700個程度の実をつけます。
旅行者を案内する際、収穫時期であれば販売しているお店を紹介しましょう。収穫時期でない場合にも、ソフトクリーム、ゼリー、キャンディなど桜島小みかんを使った加工食品も購入できます。また、このみかんは鹿児島ではお歳暮で重宝されたり、お正月のしめ縄や鏡餅飾りで使われるなど、生活に根付いている側面も合わせて伝えてください。このほか、桜島の特産品として栽培されているビワ、不知火(デコポン)、はるみ、葉ねぎなどもぜひ紹介してください。
<テーマ3>火山の恵みを活用した観光体験
ここでは桜島で行える体験について紹介しています。温泉、サイクリング、アート体験のいずれも火山活動との関連を感じられる要素があります。
温泉
火山はマグマを溜め込み、噴火することで災害を起こしますが、その一方で地熱や地下資源などの恵みも与えてくれます。鹿児島県は全国トップクラスの温泉湧出量や温泉数を誇ります。その要因としては数多くの活火山があることが挙げられます。桜島における温泉も火山による恩恵であり、島内各所に温泉地が存在します。
代表的なものとして桜島マグマ温泉があります。施設内に日帰り温泉が整備されていて、桜島フェリーのターミナルからも近く、利便性が高いです。ただし、入れ墨のある人の入館を断っているので、海外からの旅行者を案内する際はタトゥーの有無を確認する必要があります。タトゥーが入っている場合でも、施設近隣の桜島溶岩なぎさ公園では足湯があるので、入浴はできないものの温泉を楽しむことは可能です。
このほか、島内にあるいくつかの宿泊施設でも温泉が楽しめるほか、島の北部にあるさくらじま白浜温泉センターでも日帰り入浴ができます。
サイクリング
桜島ではサイクリングロードやレンタサイクルの整備も進められていて、島内を自転車で散策することができます。1周36㎞のため、3〜4時間程度で周遊することが可能です。海沿いを走りながら、火山噴火によって形成された島内の絶景を楽しめます。
ツアーとして案内する際には道中の観光スポットへの訪問や食事などを考慮し、丸一日かかることを想定したスケジュールを立てた方が良いでしょう。島内は高低差がある道も多いので体力も必要です。
島内の桜島ビジターセンターと国民宿舎レインボー桜島では自転車の貸し出しを行っています。それぞれの施設で借りられる自転車の性能が違うので、旅程や旅行者の負担を考慮した上で、利用する施設を選びましょう。
アート体験
火山灰は地面を滑りやすくし交通事故の原因となったり、農作物の商品価値を損なうこともあるなど、一般的には厄介なもの、人々に迷惑をかけるものとして扱われています。そんな火山灰を活用したアート体験ができる場所もあります。桜島にある桜岳陶芸では、着色した火山灰を画用紙に貼り付けて、砂絵の要領で絵を描きます。作った作品はその場で持ち帰ることができます。また、ここでは桜島の火山灰と温泉水を混ぜた土で作り上げた焼物である桜島焼の陶芸作品の見学と購入も可能で、自然との共生の中で生まれた芸術を感じることができます。
おわりにー桜島について紹介する場面ー
ここまで桜島を案内する上での見どころについて解説しました。「城山公園展望台」や「仙巌園」など、市内の観光名所でも桜島の姿は見ることができるので、市街地でのガイドでも地域の特徴を紹介する際に、上記の内容を活用してください。また、ガイドナビでは鹿児島を観光する上で重要となる島津家に関する記事なども掲載しています。