【高千穂】世界農業遺産の地・高千穂の農産物を知る

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はじめにー高千穂の食文化と農業ー

高千穂は宮崎県北部に位置し、年間100万人以上の観光客が訪れる人気の観光地です。高千穂峡の景観や神社巡りと並んで、食の体験も高千穂の見どころです。米、お茶、和牛などを使った料理を味わうことをはじめ、近年ではそれらの農産物を生み出す独自の農業システムにも注目が集まっています。

この記事では世界農業遺産を軸として、高千穂の食について案内する上で知っておきたい次の2つのテーマについて解説します。

  • <テーマ1>高千穂郷・椎葉山地域の世界農業遺産
  • <テーマ2>高千穂の代表的な農産物

高千穂郷・椎葉山地域の範囲

地図データ ©2023 Google

それぞれのテーマに入る前にこの記事で紹介する地域について知っておきましょう。高千穂郷・椎葉山地域は宮崎県北西部に位置する5つの自治体(高千穂町、日之影町、五ヶ瀬町、諸塚村、椎葉村)で構成されています。宮崎・熊本・大分3県の県境の近くに位置する山間部です。30戸以下の集落が7割以上を占めていて、決して人口は多くないですが、里山や棚田が織りなす美しい景観が見られる地域です。

<テーマ1>高千穂郷・椎葉山地域の世界農業遺産

ここでは世界農業遺産の全体像と高千穂が認定された世界農業遺産の特徴について紹介します。

世界農業遺産とは

世界農業遺産とは、2002年に食料の安定確保を目指す国際組織「国際連合食糧農業機関(FAO)」によって開始されたプロジェクトです。伝統的な農業・林業・漁業によって育まれ、維持されてきた、土地利用、技術、文化風習などを、次世代へ継承を図る目的に認定しています。世界では23カ国72地域(2023年11月時点)が認定されており、そのうち日本には13地域があります。
海外の事例としては、ソアーヴェの伝統的ブドウ畑(イタリア)、福州のジャスミン・茶栽培システム(中国)、マサイの牧畜(ケニア、タンザニア)などがあります。
国内の事例としては、トキと共生する佐渡の里山(新潟)、みなべ・田辺の梅システム(和歌山)、森・里・湖に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム(滋賀)などが認定されています。

高千穂郷・椎葉山地域における農業の特徴

高千穂郷・椎葉山地域は、標高1,000m以上の険しい山々に囲まれ、域内の約92%が森林であることから、耕作地が限られています。そのような厳しい環境のもとで、受け継がれてきた農業の仕組みが評価され、「高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム」として2015年に世界農業遺産に認定されました。
この地域の農業の特徴は、主に5つのポイントに分けることができます。

焼畑農業

縄文時代の農法を色濃く残した伝統的農業です。焼く場所を毎年移し、ソバや大豆等を4年程度栽培した後、休閑期を設けて20年~30年サイクルで森林を再生させます。

複合的な農業経営

少頭数を大切に育てる肉牛、日本一の生産量を誇る釜炒り茶など、特徴的な農作物の栽培を複合的に行うことによって経済面の安定を高めています。

木材生産とモザイク林の形成

木材として活用されるスギやヒノキなどの針葉樹、シイタケ栽培用の落葉広葉樹、保全管理されている常緑照葉樹をバランスよく配置することで、地域の自然環境が守られています。

山腹用水路と棚田

限られた土地で稲作を行うための創意工夫が受け継がれています。傾斜地にある棚田の水を確保するため、山間の土地に総延長500㎞以上の水路が張り巡らされています。その結果、地域では1,800haを超える棚田が存在します。

伝統文化と地域の絆

五穀豊穣の祈りを捧げる「神楽」が代表的な文化として有名です。また、秋山の草刈りで歌われる「刈干切唄」やヒエを杵でつく作業の時に歌われる「ひえつき節」などの民謡も存在します。それらを踊り、歌うことを通じて住民同士の連帯が維持されてきました。

<テーマ2>高千穂の代表的な農産物

ここまでは世界農業遺産に関連して高千穂の農業について紹介しましたが、農業の仕組みによって生み出される釜炒り茶、棚田米、椎茸などの具体的な農産物とそれらの特徴について解説します。

釜炒り茶

15世紀頃に中国から日本に伝わったお茶で、九州の一部の地域でしか製造されていない貴重なものです。年間約200トンの生産量は日本一を誇っています。一般的な煎茶などのお茶は蒸してつくられますが、釜炒り茶は、その名のとおり400度くらいに熱した釜で茶葉を炒ります。町内にあるGokoku Gold Tea Salonでは、地域で生産されたお茶を味わうことができます。

棚田米

町内に張り巡らされた山腹用水路により運ばれた水で栽培された米です。日較差(1日の最高気温と最低気温の差)があることで、甘みのもとであるデンプンが豊富に蓄積されているのが特徴です。町内にある10か所の棚田は、農林水産省より発表された「つなぐ棚田遺産」に選ばれています。

椎茸

高千穂郷・椎葉山地域は椎茸の日本発祥の地という説があるほど、高千穂では古くから椎茸が食べられています。高千穂の椎茸栽培ではクヌギの木が使用され、1年~2年ほどかけて育てられます。気温が低く、少雨で霧が多い気候により、歯ごたえと甘みに特徴があります。

高千穂牛

高千穂牛は和牛の中でも最高級だと言われています。とろけるように肉質が柔らかくと甘みを感じる脂が特徴です。2007年に開催された「和牛のオリンピック」とも呼ばれる「全国和牛能力共進会」では内閣総理大臣賞を受賞し、日本一の称号を手にしています。町内では高千穂牛を使用した料理を「牛めし」と呼び、ステーキや焼肉だけでなく、肉まん、ホットドッグなどお店ごとに趣向を凝らした料理が味わえます。

ガイドナビでは、このほか高千穂の観光に関する記事を紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。



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