【コラム】英語 全国通訳案内士/森聖太(いろいろガイドの輪)

エピソード

初めまして、森 聖太(もり せいた)と申します。滋賀県育ち、滋賀県在住、2013年度に英語全国通訳案内士の資格を取りました。「悠(ゆう)ツアー」という屋号で旅行業登録をし、FITのお客様向けに県内着地型ガイドツアーを実施しています。ツアーの内容はおもに、プライベート形式で里山などを訪ね、現地の方との交流を通して、地域の暮らしやなりわいに触れる、というものです(ウェブサイトがあるので、よろしければご覧ください)。一人親方で細々としたものですが、一応旅行業者なので、ガイディングだけでなく、コースの企画、販売、手配なども全部やります。仕事や義務が増えて大変な反面、全て自分で決められるのは気楽だし、お客様の要望にひろく柔軟に対応できるのは強みだと自負しています。

ガイドの仕事を始める原点のひとつは、10~20代のころ、県内の各地をドライブやサイクリングした経験です。週末になると、地元の友人たちと毎回違う場所へ出かけ、行った先を地図上で塗りつぶすようなことをしていました。有名でもなんでもない場所にもたくさん行きましたが、美しい自然やユニークな暮らしなど、いつも新しい発見があって、「滋賀旅」にハマっていったわけです。そうして見つけた「穴場」に県外の友人知人を連れていき、喜んでもらえた経験も、今思えば大きかったですね。

もうひとつの原点は大学での研究にあります。30代半ばまで大学院に在籍し、観光とまちづくりの研究をしてきました(今も非常勤などで大学の仕事もしています)。調査フィールドはアジア諸国にある、バックパッカーが集まるまち。現地には安宿や屋台が立ち並び、「高級感」はゼロです。でも、商売をする地元の人の生活が垣間見えることや、ゲストとホストがまるで友人のように対等に交流する様子が、私にはとても魅力的でした。生活に近い場で、世界の人と地元の人が出会い、ともに楽しい時間を過ごす。研究しながら、滋賀でこんな機会をつくれたらいいな、と思い続けてきました。
旅行業やガイドの経験どころか社会人経験もありませんでしたが、周りの人の後押しや支え、いろいろな幸運に恵まれ、起業し、ここまでやってくることができました。

そんな原点なので、滋賀でのガイドの仕事を通して、お客さんと地元の方の架け橋となることを目指しています。行き先にもよりますが、ツアーでは地元の人びと(例えば農家の方、お店の方、工房の職人さん、時には通りすがりの方など)にお会いし、交流の時間をもつようにしています。といっても、「さあ交流しましょう」では進まないので、私が双方に話題を振るなどして、自然な会話を促す感じです。

お客様の反応を見ていて実感するのは、地元の人との交流は本当に強く思い出に残るということです。それも、定型のやりとりではなくて、心の通った、「素」のコミュニケーションであればあるほど。ガイド自身がゲストに情報をお伝えするのは不可欠です。でも、例えば、出会った農家のおばあちゃんが、採れたばかりの柿をくれて、短い時間でも(通訳をはさんで)会話が弾み、最後に記念撮影とハグをしたら、その地域へのお客様の思い出は、ずっと濃くなります。ガイドとして、情報だけでなく、そういう「機会」や「場」を提供していきたいと思っています。

また、地元の方がお客様との時間を楽しんでくださることも大切です。ツアーでお会いする地元の方は、必ずしも観光事業者ではなく、本業の隙間や空き時間を私のツアーに分けて下さっているようなものです。訪問の際には、お客様はもちろんですが、地元の方の様子も見ながら、全員が互いに話したり質問したりしながら盛り上がれるように工夫しています。二方向への同時対応に頭が追いつかず、英語と日本語を逆に話してしまうこともありましたが、お客様と地元の方が一緒に喜んでいる姿を見ると報われた気持ちになりますし、旅行後にもSNSなどでお互いに連絡を取り合ったりしてくれると、本当に嬉しいですね。ガイド時以外にも頻繁に地元の方に会って情報や意見を共有することや、観光事業者としての事情を地元に押し付けてないかの自己チェックも忘れないようにしたいです。

大きなミッションは、滋賀の地域、さらには日本の地域が元気になることへの貢献です。地元にお金を落とすことももちろん大事ですし、今のガイドツアーの仕事を、地場産業の盛り上げや環境保全につなげたり、地域の文化を守ったり、教育に活かしたりする方法を模索しています。何と言ってもガイドは、お客さまと地元の間にたって、観光の地域へのインパクトを左右する最前線の仕事。奥が深いし、やりがいがあります。これからも楽しく頑張っていきたいです。

リレーは関西から九州へ。次の執筆者は屋久島の会田淳一さんです。ネイチャーガイドとしてご活躍で、どんな話が出るか楽しみです。では、会田さんよろしく!


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