【コラム】ガイドをやっていて良かった!(ガイドの語る場・喜怒哀楽)

エピソード

このコーナーでは、毎回異なるテーマを設定して、数名のガイドで座談会を行います。経験して嬉しかったことや、大変だったこと、思い出に残った出来事などを語ります。今回は山梨県と宮城県、東京の通訳案内士のみなさんに「ガイドをやっていて良かった!」とのテーマでお話を伺いました。

出席者

・新井達司(英語 全国通訳案内士、山梨通訳ボランティアネット会長)
・高橋みち子(英語 全国通訳案内士、宮城県在住 2003年よりガイド業務)
・三田宏和(英語 全国通訳案内士、東京都在住 2017年よりガイド業務)

司会:これまでは東京近郊のガイドさんにお話を伺って来たのですが、今回は山梨県と宮城県、そして東京都の3人のガイドさんに参加頂きました。新井さんは山梨県庁を今年3月に退職されるまで長く観光振興にご尽力される一方、全国通訳案内士の資格を取得、またボランティアガイドの会長を務められるなど、多方面でご活躍されていらっしゃるのですね。

新井:はい、私の場合は他のガイドさんたちのように、大勢のお客様をあちこちに案内するのではなく、ちょっと違った形の活動が多いですね。

司会:高橋さんは仙台にお住まいだそうですが、やはり東北地方をご案内することが多いですか?

高橋:東北地方はもちろんですが、インバウンドで東北地方に来訪されるのは訪日客全体の2%しかいないそうで、金沢・高山などのいわゆるゴールデンルートをガイドすることも結構ありました。

司会:三田さんは東京なので、やはり多いのは東京近郊ですか。

三田:はい、東京都内や富士箱根、日光などが多いですね。10月に入国制限が撤廃されて、急にインバウンドのお客様が増えて来たことを実感しています。

司会:今日は「ガイドをやっていて良かった!」とのテーマで皆さんにお話を伺いたいのですが、初めに新井さん、いかがでしょうか。

新井:県の観光振興という前職のときには、海外のメディア関係者を山梨県内にご案内することが多かったですね。ベトナムの方たちを雪の八ヶ岳にお連れした時に印象深いことがありました。

司会:初めて雪を見たとか?

新井:まさにその通りで、初めて雪を見て感激されたらしく、帰国後、雪の八ヶ岳の印象を絵にしてSNSに載せてくれたのですが、その八ヶ岳が実物よりも美しく、まるでアルプスの山のようなスケールで描かれていて驚きました。よい印象を持って帰って頂いたとわかって嬉しかったですね。

司会:高橋さんはいかがでしょう。

高橋:オーストラリアから来られたグループをゴールデンルートにご案内したことがあったのですが、数年後に同じグループが再度来日した際に、ご指名で私が住んでいる街に行きたいとのことで、仙台や松島、さらにその他の東北地方をご案内しました。

司会:リピーターとはすごい。ガイド冥利に尽きますね。

三田:私の場合も、東京都内を2日間ご案内したイタリア人のグループのツアーリーダーの方と、数か月後にイタリアで偶然再会したことがあってビックリしました。先方も私のことを覚えてくれていて驚いていましたが、ガイドをやっていなければ絶対にあり得ない出会いですね。

高橋:これはまた別の話ですが、シンガポールからやって来た三世代の大家族をバス1台借り切って芦ノ湖にご案内しました。その中の若いご夫婦の奥様が妊娠3か月だったのですが、出血してしまったのです。

一同:それは大変ですね!

高橋:至急小田原の市民病院にお連れしたのですが、日本では妊娠3か月の場合、投薬や注射などの治療をしてくれず、安静を指示されるだけなのです。お医者さんは英語を話せない方だったので私が診察室まで入って指示について通訳しましたが、自分が女性で良かったと思いました(笑)。

司会:確かに、男性だったらそこまでできなかったかもしれないですね。

高橋:入院して安静するように勧められたのですが、お客様が私と離れたくないとおっしゃるので、結局残り3日の行程をホテル以外バスから決して降りず成田まで共に行動し、シンガポールに帰国後すぐに入院されたと聞きました。

司会:それはなかなか大変な経験でしたね。

高橋:でもその後、「無事に赤ちゃんが生まれた」と連絡を頂いて嬉しかったですよ。

一同:それは良かった!

新井:甲府では春に信玄公祭りが行われ、千人ほどの人たちが侍姿で市内を練り歩きます。毎年これを見に横田基地からアメリカ人の団体でやって来られ、わたし達ボランティア団体の通訳が案内するのですが、侍姿に驚いたり、写真を撮るお手伝いをしたり、皆さんと楽しく交流できるのは、本当に楽しいし嬉しいですね。

高橋:東北に来られるお客様たちが異口同音におっしゃるのは、「東北は東京や京都に比べて人が少なく、ストレスフリーでゆっくり観光できる」です。

三田:確かに東京だとどこを歩いても迷子の心配をしないといけないですからね。

高橋:2011年の東日本大震災の津波で枯れてしまいましたが、瑞巌寺の樹齢400年の杉並木や、平泉・中尊寺の杉並木などを、人混みに遭わずに静かに楽しめるとお客様が評価して下さると、東北の良さを理解して頂けたようでとても嬉しくなります。

三田:その地のよさをわかって頂くと嬉しいですよね。インバウンドのお客様には案外日本の自然を楽しみにしている方が多いので、東京でも浅草などの人混みの観光地より、明治神宮の森や、浜離宮の庭園の方が良かったと言われるお客様もおられます。「原宿の竹下通りはちょっとね」と敬遠されるお客様を、その後で新宿御苑にご案内したらとても喜ばれたのが印象的でした。

新井:この流れでちょっと宣伝(笑)。ご存じのように山梨県は山岳県なので、これを生かして山岳信仰に使われていた古道を復活させて、熊野古道のようにインバウンドのお客様に来て頂けるようなルートを開発中なので、これが出来るとまたガイドとしての楽しみが増えそうです。
こうしたルートを訪ね歩く外国人の方たちが地元の方たちとの交流をする、そしてその交流のお手伝いをすることが出来れば、ガイドとしてとても嬉しいですね。

高橋:私も、日本には何度も来ているので瑞巌寺などの有名どころには行かない行程を組んでほしい、と要望されたお客様の経験があります。

司会:それはちょっと悩みますね。

高橋:松島には行ったのですが、塩釜から地元の人しか使わないような連絡船に乗って松島湾の島に渡りました。着いた先の島は、外国人観光客の方が普通行くようなところではなかったのですが、却ってそれが良かったらしく、お客様は地元の人たちとの交流を楽しんで、とても喜ばれていました。

新井:それはいいですねえ。外国人の方たちが殆ど行くことのないところでは、英語を話す日本人もほとんどいませんが、こうした方たちから色々な話や気持ちを引き出して、外国人の方たちとの交流を図れるのも通訳ガイドとしての喜びと言えますね。

司会:インターネットが発達して、訪日される外国人のお客様も事前にしっかり下調べをして来られることが多いので、これからのガイドには単に観光地を案内するだけでなく、皆さんのように一歩踏み込んで、体験型と言うか、訪問先の人たちとの交流の仲立ちをする役割が重要になるのでしょうね。

三田:私も雨の日の富士山のツアーで、この日は富士山が見えないと判っていたので、予め晴れた日の富士山の写真をプリントしたものを持参して、バスで皆さんにお見せしたら、「インターネットで見たから知ってるよ!」と言われてがっかりした思い出があります(笑)。

司会:ネットでは判らない、感じられない体験をしてもらうことが、ガイドの新たな役割になりそうですね。本日は皆さんありがとうございました。

一同:ありがとうございました!

編集後記:東北地方も、山梨県も観光資源は豊富な地域ですが、まだまだ知られていない魅力が一杯あることを、皆さんのお話を聞いて実感しました。定番コースだけでなく、こうした地域にも外国人のお客様をご案内して、ネットだけでは判らない日本の魅力を感じて頂きたいなと思いました。(司会・執筆:三浦陽一/GICSS研究会)

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