【コラム】食べられません!(転ばぬ先のガイド事件簿)

エピソード

このコーナーでは、皆さんの今後の活動の参考にしていただくよう、全国のインバウンドガイドの様々な体験、失敗談のエピソードを紹介致します。今回は神奈川県在住の全国通訳案内士、広嶋美和子さんにお話を伺いました。
主に富士箱根日帰りバスツアーに従事する若手の英語ガイドさんです。

トラブル発生! 確認したのに…

この日広嶋さんは日帰りのバスツアーをご案内していました。朝、新宿のホテルを出発して、富士山五合目にお連れして景色をご覧頂いた後に忍野八海で昼食、箱根に向かって、芦ノ湖遊覧船、駒ヶ岳ロープウエーの観光スポットを回って帰ります。
バスは冬晴れの新宿を出発しました。

旅先でのお食事はお客様の大きな楽しみの一つですね。この日のランチは忍野八海のレストランで、鍋料理を含む和風セットが提供されることになっていました。
バスが中央高速道路に入ってしばらくして、府中競馬場が見えるあたりで、広嶋さんはいつも客席を回って、ランチメニューの説明をします。ベジタリアン用の別メニューの必要数を確認して、あらかじめレストランに電話連絡するためです。

座席表のコピーを集計用紙として用意して、40人ほどのお客様の希望をひとつひとつその紙に書き込んで、合計を出してレストランに報告し、ひと仕事が済みました。
「話しかけてこられるお客様への対応もしながら、食事の希望を伺って書き留めて、それを集計してランチのオーダーを出すのは、簡単そうに見えて実はとても神経をつかう仕事」なのでホッと一息つきました。

さて、富士山五合目で快晴の素晴らしい景色を楽しんで頂いた後、昼食のレストランにお連れすると、イスラム教徒の3人のご家族(お子さん連れのご夫婦)が、戸惑った様子で広嶋さんに声を掛けてきました。自席で目の前に置かれた肉料理を指さしながら、
「これはハラルでもベジタリアンフードでもないので食べられない。あなたはさっきバスの中で確認したではないか」。
広嶋さんは、自分のオーダー間違いだとすぐに気が付きました。

その時ガイドがとった対処法は?

すぐにお客様にお詫びし、レストランにベジタリアンセットの追加をお願いしました。さらに別の家族のお子さんが、目の前で固形燃料を燃やす紙鍋料理が珍しくて、触って倒してしまうというアクシデントもあり、てんやわんやになりましたが、お店もスピーディに対応して下さり、幸いほとんど出発時間は遅れずに済みました。この日のドライバーさんはベテランの方で、広嶋さんが途中で「出発時間が遅れて、芦ノ湖遊覧船は1つあとの便になると思います」と弱音を吐くと、「まだ大丈夫だよ、がんばろうよ」と励ましてくれて、それが嬉しかったとのこと。

トラブルの原因はどこに?

この時はお客様から話しかけられることが多く、その対応に気がとられて、計算間違いを起こしてしまいました。「目の前の仕事を着実に進める、は基本のキですが、改めて落ち着くことが大切だと身に染みました」と広嶋さんは振り返ります。

転ばぬ先の防止策は?

基本に忠実(この場合は①落ち着く ②数字は複数回確かめる)が一番ですね。
広嶋さんはさらに「次の一手」を考えました。

「これ以来ランチオーダーの際、私自身のメニューをベジタリアンで用意しておくようにしました。こうしておけば、ベジタリアンの方のお食事が足りない時に、少なくとも一人分は入れ替えることで対応が出来ます」。実際にその後も何回か、注文間違いが起きてしまって、この対策で事なきを得た、ということがあるそうです。

「それでお客様からは大げさに”you are my life saver!” と言って頂いた事もあります。元はと言えば私に落ち度があったのですけれどね」と明るい笑顔で語る広嶋さんでした。(執筆:舟橋 宏/GICSS研究会)

広嶋美和子(全国通訳案内士)

短大卒業後、外資系メーカー勤務を経て、2018年ガイド免許取得。同年春よりパッケージバスツアーのチェックインおよび新幹線乗り換えアシスト業務を始め、秋から富士箱根日帰りバスツアーの通訳ガイド業務に従事する。現在、ガイディングに笑いを取り入れるべく、英語小噺に挑戦中。

 

関連記事

特集記事

TOP