【コラム】英語 全国通訳案内士/渡邉晶江(いろいろガイドの輪)

エピソード

こんにちは。英語全国通訳案内士の渡邉晶江と申します。出身はさいたま市で、現在は東京在住です。2009年に通訳案内士の資格を取得してから関西を中心にガイドの仕事をしていました。コロナでガイドの仕事はゼロになりましたが、最近またガイドの仕事が出来るようになり、「やっぱりこの仕事が好き!」だということを改めて実感しています。

ガイドの仕事を知ったのは、学生時代に旅行会社でアルバイトをしていた時でした。外国人を束ねて、バリバリ働くガイドさんに憧れはしたものの、当時はかなりの狭き門だったので、きっと自分には無理だろうとずっと挑戦せずにいました。でも人生の転機は突然来るものですね。夫の転勤で札幌から親戚も友達もいない神戸に引っ越した時のことです。知らない土地での子育ては孤軍奮闘状態で、閉塞感もありました。そんな中で、一回はきちんと自分が本当にやりたいことに向き合ってみたいと考えるようになり、通訳案内士を目指し始めます。現状を打破したいというマイナスの感情からの挑戦でしたが、子供が寝ている間に勉強の時間をつくって、知らなかった日本のことを学ぶことはとても新鮮で、刺激的でした。今ではたくさんのガイド仲間にも恵まれ、結果的に、この時の決断は私の人生でも最良のものだったと自信を持って言えます。

私がなぜガイドの仕事が好きなのかは、多分お客さんの人生の大事な部分に触れられる瞬間があるからだと思います。プロポーズの旅や、傷心の旅、大事な家族旅行、お客さんそれぞれに旅の理由やストーリーがあり、ガイド次第でその旅をより楽しく思い出深いものにできるというところにこの仕事の醍醐味があります。

先日のツアーではこんなことがありました。
富裕層のお客様で、結婚前もキラキラとした職業、お母さんになった今もインスタグラマーで、誰もが羨むような素敵な方でした。京都の茶道体験をされていたときに、お茶の先生の「一期一会」の話を私が通訳していると、お客さんの目から涙がこぼれてきました。亡き妹さんを思い出されたのです。妹さんは日本の文化やかわいいものが大好きで日本にいつか行ってみたいとずっと言っていたそうですが、願いは叶うことなく、病気で7年前に若くして亡くなってしまいました。そのお話をお茶の先生にすると、お茶の先生が「じゃ、妹さんに献茶をしましょう」と言ってくださり、お客さんは心を込めてお茶を立てられました。床の間に皆で献茶をしたときには、なんとも穏やかで優しく甘やかな時間が流れていました。
お客さんの妹さんへの思い、茶道の伝統と懐の深さ、先生のおもてなしの心や京都の美しいお庭など全ての点と点がその瞬間に合わさったような不思議な時間でした。その場にいた全員がまさに「一期一会」を、身をもって体験したのです。お客さんも日本滞在で一番印象的だったのはこの茶道体験だったそうです。ガイドとして、人や時間をつなぐことに少しでも役立てていたとしたら、こんなに嬉しいことはありません。

もちろんガイドの仕事は大変なこともたくさんあります。急な予定変更や、降りかかる無理難題にも対処しなくてはなりません。新人のときには、大阪城で団体のお客さんをロストしてしまったこともありました。私の浅い説明や連れて行った場所に、お客さんが満足してないような顔を見ると、冷や汗タラタラ、消えてしまいたくなる瞬間もたくさんありました。お客さんは気がつかないとしても、自分で納得がいかない仕事をしてしまったときは本当に悔しいですし、ツアー後の一人反省会はこれからもきっと終わることはないでしょう。それでもお客さんが「ありがとう!」と喜んでくださる限り、そしてまた日本に来てくださる限り、私はこの仕事をずっと続けていくのだと思います。

お仕事をリタイア後に日本旅行されるお客さんが多いので、よくこんなやり取りをしています。
お客さん:「もうリタイアしたから、毎日気ままで最高だよ」
私:「リタイア!それは世界で一番いい仕事ですね。ガイドは世界で二番目にいい仕事ですけどね。」
お客さん:「あはは、そうだね!」(この会話、ほぼ100パーセント笑ってくれます。)
でも私はいつも心の中で思っているんです。ガイドは、本当は世界で1番いい、1番幸せな仕事だと。

さてお次は新人の頃一緒にサイクリングツアーで苦労を共にしたフランス語英語ガイドの杉原正志さんにバトンタッチしたいと思います。今では、海外まで通訳に行かれたり、日本の歴史の本もフランスで出版されたり、ガイドを超えた素晴らしいご活躍をいつも尊敬しながら、拝見しています。きっと楽しいお話が聞けると思います。どうぞご期待ください。

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