【神戸】日本一の酒処・灘五郷の魅力を知ろう

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灘五郷は日本全国でも随一の日本酒の生産量を誇ります。世界的な日本酒の人気が高まっていることから、今後灘五郷へ旅行者を案内する機会も増えることでしょう。この記事では灘五郷の魅力を伝える上で知っておきたい以下の3つテーマについて解説します。

  • <テーマ1>灘五郷の歴史
  • <テーマ2>灘五郷の酒造りに欠かせない米と水
  • <テーマ3>灘五郷の特徴的な酒蔵

灘五郷の範囲

各テーマに入る前に灘五郷の範囲について知っておきましょう。灘五郷は、兵庫県の南東部にある5つの酒造地の総称です。神戸市の西郷、御影郷、魚崎郷、西宮市の西宮郷、今津郷を指しています。白鶴や大関などの大手日本酒メーカーがあるほか、中小の酒蔵も点在し、合計26の酒蔵があります。案内する上では酒蔵が数多く集まっていて、見学施設も複数存在するため、御影郷や西宮郷などがツアーに組み込みやすいでしょう。
単に「灘」と言う時には、六甲山地と大阪湾に挟まれた東西に長い平野部を意味しますが、その範囲は時代によって変化してきました。そのため、酒処としての灘を強調する場合には灘五郷と呼ばれ、現在の神戸市灘区新在家から西宮市今津に至る沿岸約12kmの範囲を指します。

<テーマ1> 灘五郷の歴史


このテーマでは全体像をつかむために、灘五郷の歴史を紹介します。特に日本トップクラスの生産量を誇るまでに発展してきた背景は知っておきたい点です。

日本酒の歴史

日本酒の起源は諸説あります。日本列島において、いつから米を原料とした酒を造るようになったのかは明確ではありません。古代中国の歴史書には日本で酒が造られていた記述はあるものの、それが日本酒であるかは定かではありません。8世紀に書かれた「大隅国風土記」に米を原料とした酒に関する記述があり、それを日本酒のルーツだとする説があります。その当時は原始的な方法で「口噛み酒」がつくられました。米を口の中でよく噛んだ上で吐き出し、容器に入れて保存すると酒が出来るというものです。仕組みとしては、唾液に含まれる酵素によって米のデンプンが糖へと分解され、その糖が空気中の微生物と化学反応することでアルコールの成分が生成されます。
古代の日本酒はペースト状で濁っていました。現在のような透明で澄んでいる清酒は室町時代に奈良・正暦寺でつくられました。「菩提泉(ぼだいせん)」と呼ばれる銘柄で記録されていて、日本最初の清酒、日本酒の先祖とも呼ばれています。現在では当時の製造工程を再現した復刻酒も販売されています。

灘五郷の歴史

灘五郷で酒造りが始まった時期は明確ではありません。伝承によれば鎌倉時代の終わり頃、記録としては室町時代には始まっていたとも言われますが、本格的に酒造りが始められたのは江戸時代です。寛永年間(1624〜1643年)にそれまで酒処として栄えていた伊丹から西宮に移ってきた醸酒家が酒造りを開始し、それ以降周辺地域に多くの蔵元が誕生しました。
灘五郷が酒処として発展した背景は、良質な水が湧いていたこと、原料米が集積する大阪に近い立地条件、船便による江戸までの輸送網の確立などが挙げられます。江戸時代の後期には江戸で飲まれる酒のうち、8割が灘の酒だったとも言われています。
明治時代になると、幕府による製造の規制がなくなり、政府に一定の免許料を納めれば誰でも酒造業に参入できるようにしました。それによって競争が激化したため、一時的に灘五郷の酒蔵に危機が訪れました。しかし、工場の建設など設備の近代化が功を奏して、現在に至るまで日本を代表する酒処の地位を守ってきました。

<テーマ2> 灘五郷の酒造りに欠かせない米と水


米と水の質は日本酒の味を大きく左右します。日本各地では様々な品種の米が使われ、その地域の水を活かした日本酒が作られています。灘五郷を案内する上でも、それらに関してどのような特徴があるかを知っておきましょう。

酒米・山田錦

灘五郷の北にそびえる六甲山の麓には、古くから良質な米が育つ穀倉地帯が存在します。そこでは、酒の原料となる酒米「山田錦」が生産されていて、兵庫県産の山田錦は、特に品質が優れており、灘五郷の酒蔵でも原料として使われています。山田錦は米粒が大きく、デンプン質が大きいことから、特に吟醸酒をつくるのに適しています。
旅行者を案内する際は、酒米は米粒の中心部である心白が大きいなど、食用米との違いについて説明するほか、酒質が端麗なものになる「五百万石」や、繊細な香りとすっきりとした酒ができる「美山錦」など、酒米の種類や特徴などについても調べておくと良いでしょう。
また、酒蔵を訪れて試飲する機会があれば、純米酒や大吟醸酒などを比較しながら味の違いを旅行者に楽しんでもらいましょう。

宮水

日本酒の製造過程で使われる水は仕込み水と呼ばれます。麹や酵母の栄養分となるカリウム、リン、マグネシウムなどを含んだ水を使うと、雑味の少ない日本酒に仕上がります。
反対に、香りの悪影響を及ぼす鉄分や、紫外線による劣化を早めるマンガンを含んだ水を使うと、味が損なわれます。また、ミネラル量(カルシウムとマグネシウムの含有量)によって決められる水の硬度は、微生物の働きを促進するため、味が異なってきます。ミネラルの少ない軟水で造った日本酒は、水そのものと同じように、まろやかな味わいに仕上がります。逆にミネラルが豊富な硬水を使うと、旨味とキレがある辛口のお酒になります。
灘五郷ではミネラルを多く含む硬水である「宮水」が使用されています。ミネラルが豊富かつ鉄分が一切含まれていない酒造りには理想の水です。販売されているミネラルウォーターの多くは硬度が30〜40ですが、宮水の硬度は100程度で日本屈指の硬水です。ちなみに、日本で他に酒処と知られる京都・伏見の水は80程度で、広島・西条の水は30程度だと言われています。

<テーマ3>灘五郷の特徴的な酒蔵


ここでは灘五郷の数ある酒蔵の中でも見学設備を備えているスポットを中心に紹介します。それぞれの施設の特徴や体験内容を踏まえた上で旅行者を案内し、日本酒の魅力を伝えましょう。

西郷(神戸市)

西郷は三宮や新神戸駅から距離が近く、最も西側に位置しています。沢の鶴が運営する「沢の鶴資料館」では酒造りに関する資料の見学、試飲体験ができるほか、海外からの旅行者向けに免税制度を整えた土産物店も併設しています。昔の酒蔵をそのまま資料館として公開しているため、伝統的な酒蔵の雰囲気を楽しめることも魅力です。代表的な銘柄はロングセラーの純米酒である「米だけの酒」や、冷蔵が基本的に必要とされる生酒を常温で楽しめる「100人の唎酒師(ききざけし)」などがあります。

御影郷(神戸市)

御影郷は西郷の東隣に位置するエリアで、訪問する施設によって阪神電車の石屋川駅、御影駅、魚崎駅など降車する駅が異なります。代表的な施設として白鶴酒造資料館があります。大正時代に建造された木造の酒蔵を資料館として公開しています。昔の酒造りの工程を人形で再現しているので、当時の雰囲気を楽します。試飲コーナーでは搾りたての原酒を味わうことができます。
代表的な銘柄は原酒ならではの芳醇な味わいと豊かな余韻が楽しめる「白鶴特別純米原酒蔵酒」や、手作業によって麹を作り、圧力をかけず自然に滴り落ちる雫酒のみを集めた「超特撰白鶴天空袋吊り純米大吟醸」などがあります。また、意外性ある商品としては化粧品もあります。酒粕や麹を用いたシート状のマスクや保湿液などが販売されています。
この他、御影郷には映像資料や多言語対応が充実している「神戸酒心館」や、生酛造りや樽酒などの伝統的な酒造りに定評のある菊正宗が運営する「菊正宗酒造記念館」などがあります。

魚崎郷(神戸市)

魚崎郷は灘五郷の中央に位置するエリアで、施設によって違ってきますが、最寄り駅は阪神電車の魚崎駅、青木(おうぎ)駅、深江駅となります。魚崎郷の代表的な施設として1996年3月にオープンした「浜福鶴吟醸工房」があります。製造の全工程をガラス張りで見ることができ、四季を通じて、リアルタイムで酒造りを見られるのが特徴となっています。ここでは昔ながらの製造工程と現在の製造工程を比較した展示もあります。機械化されるまでは一年の中でも日本酒を作ることのできる期間は秋から冬にかけてと限られていました。また、もろみの仕込みを見学できるのも魅力で、見学のあとには試飲コーナーで日本酒を味わうことができます。
代表的な銘柄は、加水調整せず大吟醸の原酒を無濾過のまま、手作業による袋しぼりで瓶詰めした「大吟醸浜福鶴」や、シェリー樽で熟成させた様々な原酒を組み合わせてつくられた「絲 ito 」などです。魚崎郷にはこの他にも、展示スペースだけでなくレストランやバーも備えている「櫻正宗記念館」などがあります。

西宮郷(西宮市)

西宮郷は西宮市の中心部に位置するエリアで、施設を見学する際には阪神電車の西宮駅や今津駅が最寄りとなります。西宮郷では「日本盛酒蔵通り煉瓦館」、「白鷹禄水苑」、「酒ミュージアム」などの見学施設が充実していることに加え、事前予約をすれば見学できる酒蔵もあるので、地域を周遊しながら日本酒の魅力を楽しむことができます。

今津郷(西宮市)

今津郷は最も東に位置していて、阪神電車の今津駅と久寿川(くすがわ)駅が最寄りとなる酒蔵が存在します。今津郷においては、「大関」のブランドで広く知られている酒蔵が「甘辛の関寿庵」を運営しています。搾りたて生原酒の量り売りや、酒を使用したカステラなどのお菓子を販売しています。

灘五郷は酒蔵を1日で何ヵ所も訪れられるのも魅力です。電車やバスを利用すればアクセスできることはもちろん、特に御影郷には徒歩圏内に酒蔵が集まっています。酒蔵を複数訪れる場合には、最初の場所で製造工程について説明し、残りの場所では試飲や蔵元の方との交流の時間を多くとるなど、滞在中の時間配分を工夫しながら案内しましょう。

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