【コラム】風流踊をガイドする(ガイドの、ガイド)

エピソード

岐阜県郡上市八幡町で英語ガイド育成のお手伝いに携わらせて頂いている関係から、昨年に引き続き先月は2度、郡上八幡を訪れる機会がありました。そんなご縁が続いた矢先に、郡上踊りが、全国24都道府県41件の民俗芸能「風流踊(ふりゅうおどり)」の一つとして、ユネスコの無形遺産に登録される見通しとの11月1日付の新聞記事を目にして、とても嬉しい気分になりました。訪れるたびに地元の人々の郡上踊りに対する“愛”を溢れるように感じていたからです。

郡上踊は日本三大盆踊りの一つ(他の2つは阿波踊りと秋田県の西内音内の盆踊り)です。元は税務署として使われ、いまはレトロなミュージアムとなっている大正9年建築の郡上八幡、博覧館では、定期的に観光客向けに郡上踊りの解説と実演が行われています。

郡上踊では、10種類の曲が踊られて、若い馬を乗りこなす様子を表した「春駒」や猫のしぐさを模した振付の曲などがありますが、一番代表的な曲は「かわさき」です。 “郡上の八幡 出てゆく時は 雨も降らぬに (涙で)袖しぼる・・・” 「かわさき」は伊勢の「河崎」からきており、昔の伊勢参りの旅に関連した心に刺さるストーリーが由来となっているという説があります。
ホテルのレストランや宴会場、部屋の名前が「かわさき」と名付けられているのを見ると、その人気を物語っているのがわかります。そんな説明も、外国人客には是非してさしあげたいですね。

夏には31夜に渡り、町内各所で踊りがあり、全国から海外からも楽しみに徹夜踊りに参加する人たちで賑わうというのですが、太鼓や笛の音に合わせて踏み鳴らす踊り手の下駄の音が圧巻なのだそうです。そこで見せてもらった2足の下駄は一方が新品。そしてもう一方は3cmほどすり減ってしまった下駄です。
「一週間ぐらいでこんなに減っちゃうんですよ!」
「エェ~ッ!」
踊り手の情熱と現場の白熱のさまが想像できました。下駄屋儲かる?!(笑)

毎年、優秀な踊り手は何名かが表彰されるのだそうです。表彰状は、それはそれは嬉しい宝物のようなご褒美感覚で、皆がこぞって精を出すわけですが、必ずしも慣れた地元の方々だけが対象ではありません。
「表彰される確率の高い日がありますが、それはどの日でしょう?」
というクイズが出されました。さて、はて…?参加者は皆その場で一生懸命考えます。
「参加人数が少ない日の方が、個々が目立って目をつけられやすいのです。つまり、平日の雨の日です」
な~んだ、そうか!と場が和気あいあいに盛り上がって郡上踊り実演コーナーの締めとなります。そう、荒天であっても天気に拘らず、踊りは催される人気なのですね。

このような曲の説明から始まって、様々なサイドストーリーが語られる説明員の解説は、外国人にすべて通訳ガイドが通訳をする必要があります。他の日本人客も同席していたり、時間が長めに取れない時、またイアフォンなどを使用する時ならば、同時通訳をするのが理想的です。

しかし、そうもいかない時には、事前に下見をしてどんな説明がなされるか聞いておいたり、あるいは本番の直前に、ほんの2-3分でも事前に担当者から簡単にかいつまんでポイントを聞いたりする打合せができると安心ですね。でもなかなかそれも難しい、ということになれば、とにかく事前に独学でできる限りの情報を学んでおくことで、かなり本番のハードルが超えやすくなれそうです。

観光案内の説明では、まずは、外郭概要の情報を述べる。つまりガイドブックなどに記載された基礎知識の部分です。そしてそれから、表面的な説明から発展して、それに係る側面のエピソードをいくつか添えます。そしてガイドさんや語り手自身、地元の人々がどのようにそれを捉えているか?感じているのか?という“人々の心”を、外国人観光客にはお伝えしたいものです。

そして仕上げは、できれば笑いのとれるジョークでその場を締めくくれると、圧倒的に印象ナイス!で、次の場所に移動がしやすくなりますね。

ランデル 洋子(全国通訳案内士/GICSS研究会 理事長)

名古屋出身。フリーランスの英会話講師、海外旅行添乗員・海外駐在員、通訳ガイド、ビジネス通訳、アラスカツアーオペレーター事業運営などを経たのち、株式会社ランデルズにてグローバル人材育成や通訳ガイドの派遣・研修業務に携わる。元アメリカ大統領親族のアテンドなど重要業務を歴任しつつ、オランダIOU大学で異文化情報学博士号を取得し、GICSSを創設。愛知万博では日本(政府)館VIPエスコートのトレーニング講師を務めるなど全国での講演、研修、執筆活動に従事。また観光庁の通訳ガイド関連の委員会委員を歴任。日本の通訳ガイド育成の第一人者と定評がある。

著書:「電話の英会話」「英語を使ってボランティアしたい」「外国人客を迎える英会話」「通訳ガイドがゆく」など11冊。

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