1. はじめに-入国制限の緩和が発表-
岸田首相は日本時間で2022年9月22日の夜、訪問先のニューヨークにおいて訪日旅行者に対する水際対策を、10月11日より大幅に緩和する方針を発表しました。従来より徐々に規制が変わってきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大前の状況に近づくことが期待されています。これまでの水際対策の変遷を振り返り、今後の見通しについて解説します。
2. コロナ禍における入国制限の内容と影響
入国制限の内容
2020年の3月から4月にかけて新型コロナウイルスの感染が日本国内でも広まりました。これを受けて政府は、100以上の国・地域からの入国禁止、ビザなし短期滞在やビザ発給の停止、入国後2週間の隔離などの措置を取りました。
入国制限の影響
これによって、2019年には3,188万人もいた訪日旅行者の数が、2020年には411万人、2021年には24万人と著しく減少することになりました。インバウンド業界への影響は大きく、一時的に事業を停止したり、撤退する旅行会社も出ました。ガイドの仕事もほとんどない状態が続きました。
3. 入国制限の緩和と現状
ビジネス目的の入国は2021年11月に一時再開
入国制限は滞在目的に合わせて段階的に緩和されました。ビジネス目的の入国については2021年11月から認められました。しかし、変異ウイルスであるオミクロン株の流行に伴って、11月末に再び外国人の入国が原則停止となりました。その後、本格的な再開は2022年3月となり、ワクチン接種済みであること、受け入れ企業による入国者健康確認システム(ERFS)への登録、ビザの発給、1日あたりの入国者数は5,000人を上限とするなどの条件がありました。後述する観光を目的とした入国のような行動制限はなかったため、滞在期間の一部を観光に当てることも可能でした。
観光目的の入国は2022年6月に再開
2022年5月から訪日旅行者の受け入れ再開に向けた実証実験が行われ、それを踏まえて、2022年6月10日から旅行者の受け入れを再開しました。旅行者はビジネスでの滞在者と同様に、ワクチン接種やERFSへの登録などが求められました。加えて、旅行業者が受入責任者とした添乗員付きパッケージツアーに参加することが必須となりました。
また、ツアー参加者は中国、アメリカ、韓国などの「青」区分に指定された約100国・地域からの入国者に限定されました。この他、マスク着用など、旅行者の受け入れに際してのガイドラインの遵守も求められました。
同じ時期には、ビジネスや留学目的の来日も含めた入国者の上限人数を、それまでの1万人から2万人まで緩和しました。
しかしながら、パッケージツアーでの観光は旅行者の自由度が制限されることもあり、7月と8月における観光目的の入国者はそれぞれ8,000人程度にとどまりました。
2022年9月には更なる緩和
政府は2022年9月7日から水際対策をさらに緩和し、添乗員が同行しないパッケージツアーを認めました。ただし、旅行業者と常に連絡を取りあえるようにして、注意喚起や各種説明をするという条件に変更されました。また、区分指定はなくし、全ての国・地域からの旅行者を受け入れ対象とし、入国者数の上限人数を1日5万人まで引き上げました。
4. おわりに-今後の見通し-
2022年9月22日に発表された新たな方針では、2022年10月11日より入国者数の上限を撤廃し、個人旅行が解禁され、短期滞在におけるビザ免除の再開などが行われます。あわせて、旅行支援策やイベント事業などを対象とした消費喚起策も実施されます。
入国に関する規制撤廃を受けて、ANAは10月末からの増便を発表しました。一部の専門家によれば、2023年には600万人程度、2024年には2,000万人程度の外国人旅行者の来訪が予測され、今後インバウンド旅行市場の本格的な回復が期待されます。