【世界遺産】世界遺産の基礎知識を学ぶ ~定義や登録基準~

ナレッジ

1. はじめにー世界遺産の仕組みー

奈良大仏
世界遺産は日本に25件登録されていますが、この記事では世界遺産の定義や登録までのプロセス、登録基準と代表的な世界遺産など、世界遺産の仕組みに関する基礎知識を解説します。

世界遺産の定義

世界遺産とは、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が管理する「世界遺産リスト」に記載された建造物、景観、自然のことです。世界遺産は大きく3つに分類されます。人類の歴史や文化の発展を表した建築物や遺跡などの「文化遺産」と、動物・植物の進化や地球の歴史を伝える「自然遺産」、そして両方の価値をもつ「複合遺産」です。それらの遺産には共通して「顕著な普遍的価値」があるとされています。どのような国・地域、どのような時代でも、どの世代の人でも、素晴らしいと感じられることを意味します。

登録の条件

世界遺産に登録されるものは、不動産であることが必要です。言い換えると、移動が不可能な土地や建造物に限られています。そのため、寺院が世界遺産になった場合には、所蔵されている美術品、書画、陶磁器などの工芸品は、構成資産(世界遺産を構成する物件)の登録対象にはなりません。加えて、芸能、儀式、祭礼などの無形文化財も世界遺産に含まれてません。これらはユネスコの別事業である無形文化遺産として登録されます。無形文化遺産の代表例としては、インドのヨガや日本の和食などが挙げられます。

なお、東大寺の大仏のように移動させることが難しいと判断された場合には、例外的に世界遺産の登録対象となっていることもあります。

日本の世界遺産

それでは、どのような世界遺産が日本にはあるのでしょうか。世界全体で見ると、世界遺産は2021年7月時点で1,154件も存在します。そのうち、日本からは文化遺産20件、自然遺産5件の計25件が登録されています。
これは世界の中では12番目に多さになります。世界遺産の登録件数が最も多いのはイタリアと中国で、55件の登録資産があります。

2. 世界遺産の登録プロセス

次に世界遺産が登録される流れと登録基準について紹介します。

登録の流れ

最初に都道府県・市町村が共同で世界遺産登録の候補となる物件を管轄する省庁に提出します。文化遺産は文化庁が、自然遺産は環境省か林野庁が担当し、審査を行います。候補物件を絞った上で、日本政府として作成された推薦書をもとに、ユネスコ世界遺産委員会による審査が行われます。なお、各国の推薦枠には上限があり、毎年1件と定められています。

審査では現地調査も行われます。ユネスコから依頼を受けて、調査を行う専門組織が存在します。文化遺産に関してはICOMOS(国際記念物遺跡会議)が行います。人類の遺跡や建造物の保存に詳しい専門家が所属する国際的な非政府組織になります。
自然遺産に関しては、政府組織や民間自然保護団体などで構成されるIUCN(国際自然保護連合)が登録の可否を判断します。それらの機関が登録基準に適しているかを確認し、審査を通過した物件が世界遺産に登録されます。

ちなみに、審査によっては登録を見送られることもあります。例えば、2021年に世界自然遺産に登録された「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」は、2018年にIUCNから登録延期の評価を受けて提案書類の再検討を行いました。

また、今後世界遺産登録が期待される地域もあります。「佐渡島の金山」の推薦書が今年提出されていました。しかし、書類の不備を指摘されたことから、当初目指していた2023年の登録が厳しくなっています。
このほか、将来的には以下の4つの候補が登録される可能性が高いです。その理由としては、事前に準備された「暫定一覧表」の中から推薦書を提出する候補が選ばれるためです。ちなみに、平泉については既に登録された世界遺産を拡大したものとなります。

  • 「古都鎌倉の寺院・寺社ほか」(神奈川県)
  • 「彦根城」(滋賀県)
  • 「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」(奈良県)
  • 「平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-(拡張)」(岩手県)

3. 世界遺産の登録基準

審査のなかで必ず確認されることは、登録基準に該当するかです。登録基準は10項目あり、1つ以上の基準を満たす必要があり、世界遺産のなかには複数の基準を満たすものもあります。文化、自然、複合、すべての世界遺産をこの基準で審査します。

以下ではそれぞれの基準を紹介し、登録されている日本と海外の世界遺産の事例を紹介します。①〜⑥は文化遺産、⑦~⑩は自然遺産の登録基準です。

登録基準① : 人間がつくった傑作

アンコールワット

人類の素晴らしい創造性が感じられる建造物などが該当します。

日本姫路城、厳島神社、法隆寺
海外メンフィスのピラミッド(エジプト)、アンコール遺跡(カンボジア)、自由の女神像(アメリカ)

 

登録基準②: 異文化交流

イスタンブール国や地域の間で文化交流や貿易が行われてきたことを表す物件が該当します。

日本ル・コルビュジエの建築作品(国立西洋美術館)、古都京都の文化財、石見銀山遺跡
海外 イスタンブール歴史地区(トルコ)、パリのセーヌ河岸(フランス)、ローマ歴史地区(イタリア)

登録基準③ : 文明の存在証拠

ストーンヘンジ

文明や特徴的な時代が存在したことを現在に伝えている遺産が該当します。

日本宗像・沖ノ島、長崎・天草地方の潜伏キリシタン遺産、百舌鳥・古市古墳群
海外アユタヤ遺跡(タイ)、モヘンジョダーロ遺跡(パキスタン)、ストーンヘンジ(イギリス)

登録基準④ : 建築・科学技術

建築様式や科学技術の発展を現在に伝える遺産が該当します。

日本富岡製糸場、明治日本の産業革命遺産、姫路城
海外 アントニ・ガウディの作品群(スペイン)、シンガポール植物園(シンガポール)、ゼメリング鉄道(オーストリア)

登録基準⑤ : 伝統的な生活

それぞれの文化や気候風土で育まれた独自の伝統的集落などが該当します。

日本白川郷と五箇山の合掌造り集落、石見銀山遺跡
海外バリの文化的景観(インドネシア)、ブルゴーニュの葡萄畑(フランス)、コルディリェーラの棚田群(フィリピン)

登録基準⑥ : 出来事や宗教、芸術

歴史的に重要な出来事や思想、信仰、芸術、文学などに関連性の高い遺産が該当します。

日本富士山、原爆ドーム、ル・コルビュジエの建築作品(国立西洋美術館)
海外アウシュビッツ強制収容所(ポーランド)、ビキニ環礁(マーシャル諸島)、ウルル・カタジュタ国立公園(オーストラリア)

登録基準⑦ : 景観美

自然が生み出す美しい景色や独特な自然現象が観測できる遺産が該当します。

日本屋久島
海外グレートバリアリーフ(オーストラリア)、イエローストーン国立公園(アメリカ)、キリマンジャロ国立公園(タンザニア)

登録基準⑧ : 地球の歴史

特徴的な地形など地球の歴史を伝える遺産が該当します。

日本該当なし
海外グランドキャニオン国立公園 (アメリカ)、ガイランゲル・フィヨルド(ノルウェー)、フレーデフォート・ドーム(南アフリカ)

登録基準⑨ : 固有の生態系

他の地域からの影響を受けないまま残された独特の生態系が存在する遺産が該当します。

日本屋久島、知床、白神山地、小笠原諸島
海外ガラパゴス諸島(エクアドル)、タスマニア島(オーストラリア)、マチュピチュ(ペルー)

登録基準⑩ : 絶滅危惧種

絶滅危惧種が生息する地域や生物多様性を示す地域などが該当します。

日本知床、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島
海外セレンゲティ国立公園(タンザニア)、中央アマゾン保全地域群(ブラジル)、ドナウデルタ(ルーマニア)

4. おわりにー世界遺産検定の紹介ー

世界遺産の全体像について紹介しましたが、世界遺産についてより深く学びたい人は世界遺産検定を受験してみてはいかがでしょうか。

世界遺産検定は世界遺産について学ぶことを通じて、国際的な教養を身につけ、持続可能な社会の発展に貢献する人材を育成することを目的に実施されています。2006年に始まり、これまでに30万人以上が受験しています。近年では毎年4回開催され、年間2〜3万人程度が受験しています。
試験は難易度が低い順に、4級、3級、2級、1級、マイスターに分かれており、4級~1級はマークシート方式で4択の選択問題です。国内外の世界遺産の知識だけでなく、世界遺産の制度に関する理解度も問われます。マイスターは記述・論文形式で、世界遺産条約、特定の世界遺産に関する出来事など総合的な問題が出題されます。

ガイドナビでは日本各地の世界遺産について、登録された理由や構成資産などを解説した記事も掲載していますので、ツアーの準備などにぜひ活用してください。

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